「大丈夫です」は便利な言葉です。ただ、便利であるがゆえに、気をつけて使わないと相手に誤解を与えてしまうことがあります。
何気なく使えるこの言葉を、あなたはどんな時に口にしていますか。
気遣いへの返事としての「大丈夫です」
「お部屋の温度は暑く(寒く)ないですか」「(お湯は)熱くないですか」というように、相手の状態を気遣う質問をされたとき、多くの人が「大丈夫です」と答えます。
ところが以前、こう聞かれたお客様が「ちょうどいいです」と答えてくださったことがありました。その瞬間、「きちんとした日本語を話せる、素敵な大人だな」という印象を受けたのを、今でもよく覚えています。
「暑くないですか」と聞かれて「大丈夫です」と答えるのは、「少し暑いけれど、これくらいなら耐えられます」というニュアンスを含んでしまうことがあります。「どうですか」という問いに対する「大丈夫です」は、さらに妥協している感じが強くなります。答える側にそんなつもりがなくても、です。

断るときの「大丈夫です」は伝わらない
飲食店に電話で予約をする場面を考えてみましょう。

今週の土曜日18時に6名で予約したいのですが、子供用の椅子はありますか?



恐れ入りますが、お子様用の椅子は用意しておりません。



そうですか……



ご予約はどうされますか?



わかりました、大丈夫です。
この「大丈夫です」は、結局、予約をするのか、しないのかが曖昧です。多くの人が、断るときにも「大丈夫です」を使ってしまいます。
取引先とのやり取りでも、同じことが起こり得ます。「ご希望の納期には対応できず、3日ほど遅れての納品になりますが、よろしいでしょうか」と確認されて「大丈夫です」とだけ返すと、相手は「多少遅れても、このまま進めてください」という意味なのか、「それなら今回は見送ります」という意味なのか、判断に迷ってしまいます。
断るときの言い換え表現
「大丈夫です」の代わりに、次のような表現を使うと、意思がはっきり伝わります。
不要であることを伝える場合
「今回は見送らせていただきます」「今回は結構です」「お気持ちだけいただきます」
問題がないことを伝える場合
「問題ございません」「その内容で承知いたしました」「そのままで結構です」
やんわり断りたい場合
「今回はご遠慮させていただきます」「またの機会にお願いします」
いずれも「大丈夫です」より一言長くなりますが、その分、YESかNOかがはっきり伝わります。
YESかNOかを聞かれているときのズレ
昔、フィットネスクラブでアルバイトをしていたときのことです。会員証をカードリーダーにかざしても反応せず、立ち往生していたお客様がいました。スタッフが確認したところ、会員証の磁気が弱っていたようで、機械に通して改善し、無事読み取れました。お客様は「これでいけた?」と、対応したスタッフに確認しました。
そのスタッフが返した「大丈夫です」という一言が、お客様を戸惑わせてしまいました。「これでいけた?」というのは、YESかNOかを求める質問です。それに対して「大丈夫です」と返してしまうと、「本当はまだ不具合があるけれど、今回はこちらで何とかしておきます」というニュアンスに聞こえてしまうことがあるのです。実際、お客様には「大丈夫ってどういうこと?いいの?悪いの?」と聞き返されていました。
YESかNOかで聞かれている質問には、「はい、いけましたよ!」というように、YESかNOかで答える。これが、相手の質問の形に合わせた”受け答え”です。
言葉のバリエーションを持つことの意味
そんな細かいことを、と思う方もいるかもしれません。ですが、なんでも「大丈夫です」で済ませてしまうのは、配慮に欠けるだけでなく、言葉のバリエーションのなさとして相手に伝わってしまうこともあります。
英語にも「OK」と似た意味の言葉が、”All right” “Sure” “Certainly” “Of course” “No problem” など複数あります。これだけ選択肢があるのに、「OK」ばかり繰り返していると、「言葉を知らないのかな」と思われかねません。
どんな言葉を選ぶかには、その人の言語感覚が表れます。なんでも反射的に「大丈夫です」と返すのではなく、その場にふさわしい言葉で「いいですよ」を伝える意識を持ちたいものです。


まとめ
「大丈夫です」は便利な分、YESなのかNOなのか、妥協なのか納得なのかが曖昧になりやすい言葉です。特に断るときや、はっきりした確認を求められたときは、意識して言い換える必要があります。
こうした一言の選び方は、相手にどう伝わるかを想像する力そのものです。組織全体で、こうした言葉の選び方を体系的に鍛えたいとお考えの企業様は、ぜひシュプラノートの研修メニューをご覧ください。










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